ドラえもん最終回同人誌事件

とある記事が目についた。
ドラえもんの最終回を描いたマンガ同人誌に対して、
権利団体が差し止めを行い、賠償を要求、
果ては刑事告訴まで検討しているというもの。
http://www.sankei.co.jp/culture/enterme/070201/ent070201002.htm

マンガ同人誌とは出版社を通さず、
フリーマーケット販売などを目的に個人が描いたマンガ冊子のこと。
現在は二次創作といわれるいわゆるパロディが主流になっている。
同人誌マーケットは数百億円規模の巨大なものとなり、
同人人気と原作人気とが密接な繋がりすら持つようになってきている。

更に同人で人気となった作家が商業で活躍するケースが多い。
出版社も育てる必要がないため即戦力として重宝している側面もある。

二次創作同人誌は厳格に判断すると著作権法に抵触するものだが、
同人界と商業界の持ちつ持たれつの相互依存の関係は否めないため、
権利者サイドもほぼ全てを許容しているのが現状である。

この事件は、そんな「ほぼ全て」の例外的事件。

このドラえもん同人誌。
漫画家の田嶋安恵先生が発行したものである。
一時期、爆発的な人気が出た。
なんと実売部数13380部にも達したのだ。

小学館・藤子プロも当初は静観をしていたようだが、
あまりの売り上げをマークしてしまったことにより、
権利の侵害を主張。田嶋先生側に在庫の廃棄処分、
更に同人誌売り上げ利益の返還を請求をした。

小学館の言い分は、
> 「これまでもそこそこのことであれば見過ごしてきましたが、
> ネットで野放図に拡大されていくことには強い危機感を覚えます。
> もしドラえもんに最終回があるとすれば、
> それは亡くなられた藤子先生の胸の中だけであり、
> この『ドラえもん最終話』によって、先生が作り上げた世界観が
> 変質してしまうようなことがあってはならないと思っています」

とのこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E5%B6%8B%E5%AE%89%E6%81%B5


死後の著作権というものは実にいい加減だ。
創造した者が死んでいる以上なんとでも言える。
更に相続的思想が根底にあるので承継者にそれなりの正統性がある。
作った本人でもないのに勝手に本人を代弁して権利の主張ができる。
だから、どれだけ綺麗事を並べたところで少なからず違和感はある。

とは言え、それは作品の内容次第ではある。
仮に二次製作された作品に原作に対するリスペクトがないのであれば
確かに文化発展の面からも取り締まるべきというのも理解できる。

では今回問題となった作品の中身が、
そういうモノだったのかどうか考えてみることにする。

同人誌「ドラえもんの最終回」
http://www.omosiro-flash.com/flash/final_dora.html


原作は、都市伝説として根付いているドラえもん最終話。
つまり田島安恵氏はそれを元に漫画を描いたようだ。

また、田島氏の高い画力のより実に感動的に作られており、
本家の藤子不二雄が描いたのではないか?
というような錯覚にすら陥る。原作への深い愛が感じられる。

もし子供に夢を与えることを少年漫画の役割と考えるのなら
それが藤子不二雄の遺志だというのであれば
この作品はもうまごうことなきドラえもんの最終回の一つである。

それに対する著作権管理者の反応をもう一度みてみる。

損害賠償はまだいい。
ドラえもんを利用して儲けた分は返還するべきではある。
とは言え全部返還はおかしい。
自分たちが作れないものを在野の才人につくってもらい
生み出された利益だけ全部奪い去る。それはおかしい。
確かに著作権法上、違反者の下に生じた利益額は
それをそのまま不当な利得額と推定することが可能ではある。
だが今回の場合はそれをそのまま当てはめてほしくない。
田嶋先生の才能があったからこそ、ここまでの作品になった。
その分は考えて欲しい。

最悪なのが、刑事告訴。
行為の悪性をもって取り締まるべき刑事告訴のはずだが、
まったくもって作品の中身を問題にしていない。
どう見ても単に金を稼ぎすぎたから訴えたにすぎない。
よくそれで「藤子先生の世界を壊すから」と言えるものだ。

現在は商業界と同人界の繋がりは濃い。
片方だけが繁栄することはもはや有り得ないと言っていい。
両者が繁栄するか、マンガそのものが衰退するかしかない。

この問題はもっと繊細に扱った方がよい。
権利者である小学館もよく考えてから判断した方がいい。
大御所の高橋留美子先生(※1)から流行の畑健二郎先生(※2)まで
所属漫画家の多くが一度は二次創作活動を経ているのだから。

※1 ※2


最後に参考資料としてコメントを掲載。

●同人誌を書いた作者 田島安恵氏のコメント

> 作者からのコメント
>
> 物心ついた頃にはドラえもんがそばにいました。
> おこずかいで最初に買った単行本、
> コロコロ派とボンボン派に分かれての戦い、
> 夏の大長編にワクワクし、友達と先の展開を予想しあいました。
> いつか絵を描くようになり、
> 今回あらためて ネームのみごとさ すばらしさに驚いています。
> 新ドラアニメを記念し、ファンの一人として
> ここに・・・。
>
> by 田島・T・安恵

http://csx.jp/~vaiosqare/doraemon/comment.html


●アニメ「ドラえもん」企画の放送作家、安達元一氏のブログ日記。

2006年6月9日の日記
 > 私に与えられた使命はドラえもんの視聴率を上げること!
2006年7月4日の日記
 > 私が視聴率UP作戦を施しての今回のSPは‥12.1%!!!
 > 今後も更に凄い視聴率UP作戦を仕掛けてますのでお楽しみに!

2006年9月4日の日記
 > 久しぶりに狙ってとった12.1%
 > ドラミの声優に千秋さんをお願いして‥‥
 > スポーツ新聞に煽ってもらって‥‥
 > 秘密道具コンテスト(http://doraemon.yahoo.co.jp/)
 > テレビ朝日&Yahoo&小学館&藤子プロに
 > 御理解御協力頂いてスタートさせ‥‥
 > このSPを狙って仕込んだ花火が上手く効果をもたらしての視聴率でした
 > スタッフ一同の努力の賜です!御苦労さまでした!

2006年9月15日の日記
 > 視聴率が全て
 > とても上質な番組を作った
 > スペシャルで4回やらせて頂いた
 > 視聴率は‥‥‥‥
 > 11% 9% 10% 8%
 > いくら上質でもこんな視聴率ではこれが最後ですよ
 > といわれた
 >
 > 少し上質さに目をつぶって
 > 視聴率がとれる仕掛けを施した
 > 結果は16%
 >
 > 素晴らしい春からレギュラーですな!
 > とお褒めを頂いた
 > そういうことである

<記事元ブログ>
ごったニメーションblog  http://plaza.rakuten.co.jp/sinya1214/15000

著作権者が言う
「藤子先生が作り上げた世界観を維持する」
という信念は一体どこにあるのか?

はたまた、それは建前でやはり全ては金儲けの話なのか?

世のドラえもんファンは自分なりに考えて欲しい。

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