裁判員制度からの逃亡方法の考察

初めは何かの冗談だと思っていたのだが、
どうやら国は本気で裁判員制度を実現させる気のようだ。

責任を全て後世に丸投げした小泉改革のひとつなのだが、
はっきり言って参加しようという気がおきない。

確かに日本の裁判官は完全に純血。
若年しかなることができないので原則として学生の延長。
法律だけに特化したエリート。

基本的に裁判所という閉鎖的空間でしか
社会と接することがない者たちなので、
どうしても世間一般とのズレは生じてしまう。

だが、実際の裁判では、
裁判官が法律以外の「事実」まで自由に認定してしまう。

すると、稀におかしな事実判断が発生することがある。

具体例を二個あげると、

①2006年4月の痴漢冤罪事件
刑事事件としては被害者の女子大生の証言に信憑性が持てず、
不起訴処分(無罪放免)になった事件だが、
さすがに加害者にされた男は職も信用も失ってしまった。
男は名誉を取り戻すべく国と女性に損害賠償を求めた裁判。
だが東京地方裁判所の松丸伸一郎裁判官は、
「携帯電話の使用を注意されるようなことで(女子大生が腹いせに)
 虚構の痴漢被害を申告するとは、通常想定できない。」
と判断した。
簡単に言えば、
『痴漢被害者の女の子が告訴までするくらいなんだから真実だ』
という意味。
証拠もないのに女性側の証言だけを全面的に支持してしまった。
真実はどうあれ、現在の女子がピュアなものだと思い込みすぎている。

②1994年の11月の少年事件
1994年11月30日の東京高裁で出された少年事件の判決で、
「乳房の唾液はA型の少女の垢とB型の少年の唾液が混ざって、
 AB型の反応を示したのである。」
と判断した。
簡単に言えば、
『A型の血液とB型の血液を混ぜたら、AB型になる。』
これは医学的にかなり問題がある。


いくら裁判官といえども、彼らはあくまで法律のスペシャリスト。
常識が伴ってるとは限らない。
事実を認定する者が少数だと、こういうことが起こってしまう。
だから、一般人の視点から事実を判断するシステムを導入すべきではないか。
というのが裁判員制度のひとつの理由。
あとは、国民主権という名の嘘っぱちのお題目でしょうか。

理由は何にせよ、
国民の義務とする以上は参加は強制になってしまう。
70歳まで生きれば十数人に一人の割合で選ばれるだろう
と言われている裁判員。

できることなら避けたいのは私だけではないはず。

裁判員が参加する裁判は社会正義を揺るがす凶悪犯罪のみ。
死体写真など一般人が見たくない証拠も当然扱う。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c4_11.html

そんなことは社会正義が好きな人だけが手を挙げてやればいい。

それに一般人的感情ならば、事実を判断する以前に人で判断する。
“人の良さそうな被告”と“見るからに極悪非道な被告”では
同じ証拠を見ても判断が変わってくる。

和歌山毒物カレー事件の林真須美被告が仮に本当は無実だったとしても、
無実に繋がる資料は全て無視するだろう、一般人の感情としては。

冷静になって真実だけを探求することは一般人には難しい。


また、裁判員になり裁判に参加すると丸一日は潰れてしまう。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c5_2.html
仕事は休まないといけない。
いくら政府が企業に理解を求めてたところで、
現実問題、各々が受け持っている業務を停止することには変わりない。
人員の代わりが利く大企業ならともかく、
中小企業や自営業者は深刻な事態になりかねない。

挙句の果て、裁判員は国民の義務なので、
交通費しか支給されない強制ボランティアである。


そこで何とかして逃げる方法はないだろうかと探ってみた。


まず裁判員に選ばれるまでの手順を追ってみる。

 ①選挙管理委員会が選挙人名簿からランダムで予定者を選出。
  (外国人、未成年者はここで排除)
    ↓
 ②裁判所が予定者の中からランダムで本年度の候補者を選出。
    ↓
 ③とりあえず、選んだ候補者に「質問票」と呼出状を送付。
    ↓
 ④拒否理由があれば「質問票」にそれを書いて提出。
  それがなければ裁判員に採用。
    ↓
 ⑤自分の番が回ってくると裁判に呼び出される。

こんな感じになる。

制度上、裁判員拒否のチャンスは④の「質問票」の回答のみ。

ちなみにこの「質問票」に虚偽の事実を書くと、
『50万円以下の罰金(前科付き)』を科せられる可能性がある。
一方、呼出無視の罰則は『10万円以下の過料』
嘘の事実を書いて逃げるくらいならば、
裁判員になった後に呼出を無視するという方法の方がまだマシ。
ちなみに過料は刑事罰ではないので前科はつかない。
交通違反の反則金に近い。歩き煙草禁止条例の違反金と同じ性質。


さて、肝心の「質問票」に書くことができる拒否理由だが、
いちいち全部を見ていたら非常に細かい。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_2.html

なので、個人的に簡単にまとめてみた。

大きく分けて以下の2パターン。

(1) 【特別な人用】裁判員になれない人
  ・無能力者など→欠格事由(裁判員法14条)
  ・国家権力に近い者など→就職禁止事由(裁判員法15条)
  ・当事者など→不適格事由(裁判員法17条,18条)

(2) 【一般人用】裁判員にはなれるが辞退ができる人
  ・やむをえない事情→辞退事由(裁判員法第16条+政令)


上の(1)は一般人には関係ないのでここでは無視し、
下の(2)、一般人の拒否可能性を追ってみる。

基本的に【一般人】は【特別な人】とは異なり、
裁判員になる義務そのものを免除してもらうことはできない。
あくまで「辞退事由(やむをない事情)」を裁判所に認めてもらうことにより、
例外的に裁判への不参加を許可してもらうだけである。
裁判員になることは強制であり、原則、裁判への強制参加である。

では「やむをえない事情(辞退事由)」に関して、
もう少し詳しく見ていくことにする。

●辞退事由(裁判員法第16条)
 ①70歳以上
 ②会期中の地方議員
 ③学生または生徒
 ④過去5年以内に裁判員に選ばれた人
 ⑤過去1年以内に候補者として裁判所に出頭した人
 ⑥過去5年以内に検察審査会員だった人
 ⑦次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由がある人
  ・重い疾病または傷害により、遂行が困難
  ・同居してる親族の介護
  ・現在進行中の重要事業の責任者
  ・父母の葬式、振替えできない社会生活上の重要な用事

①~⑥までは、
もう当てはまるか否かという白黒はっきりした内容なので、
当てはまらない以上はどうにもならない。

このように当否がはっきりした辞退事由がある者に関しては、
裁判所まで出頭する必要はなくなった。
書類を送付するだけで辞退が可能。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20061118k0000m040126000c.html

あと、⑤に関しては少し注意が必要。
「⑤過去1年以内に候補者として裁判所に出頭した人」
を反対に考えると、
本年度は何らかの事情で候補者が裁判員を辞退することができても、
その辞退許可という効果はその年だけだということ。
もし辞退事由が一時的なものであるのならば、
可能性は低いが、再度候補に挙がってしまったら、
今度は辞退不可ということである。
例えば、学生や生徒が卒業してしまった場合など。


①~⑥までに当てはまらない者は、
最後の⑦に賭けるしかない。

⑦は、『以下に列挙されている四つ』
 ・重い疾病または傷害により、遂行が困難
 ・同居してる親族の介護
 ・現在進行中の重要事業の責任者
 ・父母の葬式、振替えできない社会生活上の重要な用事
と『政令』

⑦の正確な条文の前半は、
「次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり,
 裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として27条1項に
 規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者」

任命された裁判員は、物量的におそらくひとつの事件しか扱えない。
また、一生に一回任命されるか否かという確率。
だから一回辞退をすることができれば現実的には永久辞退に近い。

そして、裁判員が審査を欠席するとその日は審理を開始できない。
これは裁判官が欠けていたら審理ができないのと同じ。
この点を踏まえ、
「職務を行うことが困難な者」
「選任期日に出頭が困難な者」
双方の基準から辞退審査をするものと思われる。

次に、辞退事由の審査基準の前提になるものを推測してみる。
「裁判員=国民の義務」という公式があるので、
判断の前提にあるものは、
一重に“裁判員の職務遂行ができるか否か”だと思われる。
それも義務なので人情的に可能か否かという判断ではなく、
物理的・経済的に可能か否かという厳しい判断をする。
「原則、辞退できない。
 ただし、急迫かつ代替手段のない例外的な事情がある場合に限り、
 特別に辞退を認めないこともない」
というスタンスをとるはずである。

では、『列挙されている四つ』を一つずつ見ていく。

一つ目。
「・父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって
 他の期日に行うことができないものがあること。」
これらは根本的に一時的な出来事なので、
裁判員選任のタイミングに重なるか否かは偶然の産物。
狙ってどうこうできるものではない。

二つ目。
「・重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。」
重い疾病という意味が抽象的だが、
あくまで判断基準の前提は“裁判員の職務遂行ができるか否か”。
だから、仮に第一級障害者でも即辞退許可という訳にはいかない。
透析患者など職務ができそうならば辞退は認められないだろう。
また、日常生活をしながら通院している程度の疾病や精神病では、
まず間違いなく辞退は認められないはずである。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_8.html

三つ目。
「・介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある
 同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。」
これも要介護者が居るから即辞退許可という訳にはいかない。
あくまで“裁判員の職務遂行ができるか否か”という視点で判断する。
だから、他の家族が自分の代わりの面倒を見ることができるような
状況下では認められない。また子供の病気になった場合でも同じ。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_9.html

四つ目。
「・その従事する事業における重要な用務であって
 自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が
 生じるおそれがあるものがあること。」
短期間の事業ならば、当然、出頭日に重なる可能性は低い。
また、“裁判員の職務遂行ができるか否か”という視点から考えると、
自営業者や農業従事者など、自らが働かないと著しい損害が発生するのが
目に見えている者であっても、特別の事情がない限りは辞退許可はされない。
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_10.html


最後に、⑥で列挙以外の項目。
『政令』の可能性。

辞退事由には「その他『政令』で定めるやむを得ない事由」
という記述がある。
政令とは、法律を補足する政府の立法令。
法律に書いてない領域を法律の範囲内で補足する政府の命令。
条文というものはどうしても抽象的な文言とならざるを得ないので、
ある程度、具体的な文言に確定する意味でよく用いられる。

その政令で、政府は辞退事由に「思想・信条上の理由」を追加した。

素直に受け取ると、“思想・信条上の理由で辞退します”
と書けば無条件に辞退できるようにも見える。

現時点においては、この問題はまだ何も具体的に決定していない。
本当にオールマイティに辞退できるアイテムとなるのか、
はたまた、解釈次第で容易な利用を封じられるのか、不明である。
ただ、司法に関する国民の権利を司法参加という義務と対応させる以上は、
少なくとも「裁判員をやりたくない」程度で辞退ができるとは思えない。
また世論調査では7割の回答者が裁判員参加に否定的な見解を示した。
仮に「思想・信条上の理由」による無条件の辞退が続出してしまったら、
凶悪犯罪の刑事裁判そのものが滞ってしまう。

おそらくは、辞退事由となる思想・信条を
「裁判員職務を遂行することができない思想・信条の理由」
に限定してくるだろう。
あまり期待はできないと思われる。


以上、一般人に関する全ての条文を洗ってみたが、
どうやら裁判員を辞退するのはなかなか一筋縄ではいかないようだ。
辞退事由の①~⑥に該当しない者はほぼ辞退不可能なのかもしれない。

四つの辞退事由に関しては未だに法務省が意見を募集しているので、
今後も増える余地はあるが、該当するのは厳しいだろう。

陪審員を採用している国では、
忙しいビジネスマンなどはあえて罰金を支払って裁判参加を拒否するらしい。
日本においても同様に、裁判員に採用されてから、
敢えて「10万円以下の過料」を支払うことにより出廷を拒否することが
一番現実的な辞退方法なのかもしれない。

休業によるマイナスを考えれば、
「10万円以下の過料」は致し方ないと言えなくもない。

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この記事へのコメント

2006年12月11日 07:54
勉強になりました。逃れるために10万以下の過料を払うはめになるなら、参加者に経費プラス10万以下の日給を払ってもいいのではと思うのは、素人考えかな?この制度が一般国民の社会常識を取り入れるのが主意ならば、まず7割以上の国民の拒否反応を考慮するのが妥当であるし、それなりの労賃を払うのも当然だと思う。素人考えでいけば裁判関係者は高額の報酬を得て任務を遂行してる、その平均額を参加報酬としてもよいと思ってしまう。
ROGER
2008年11月28日 23:08
参考になりました。なんとか選ばれない方法を考えていました。“思想・信条上の理由で”≪自分は死刑制度には絶対に反対です≫と言えば選ばれないでしょうかね?
think or die
2008年12月02日 22:38
既にご存知かと思いますが『裁判員制度の正体』(講談社現代新書)の
第9章にさまざまな拒否方法が書かれてあります。送られてきた
呼出状の受け取りを拒否するなど、「その手があったか」という方法が
いくつかありました。

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