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zoom RSS 薬害エイズ事件の利権構造・裏金構造

<<   作成日時 : 2006/09/04 00:53   >>

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ここに来て薬害エイズに関してのニュース
いくつかピックアップされてきたので、
当時の薬害エイズについて、雑学知識に近い形でまとめてみた。
憤りと国家の恐ろしさを多少なりとも感じていただければ成功である。


薬害エイズの利権主体は、三つ。
「官僚」、「製薬メーカー」、「医師」。

そしてキーワードはふたつ。
「製薬の承認」「天下り」


●まず一つ目のキーワード「製薬の承認」
「製薬メーカー」⇔「医師」

医薬品の承認審査は、 厚生省の「中央薬事審議会」で行われる。
審議会で承認されないとメーカーで製造することができない。
ここで、問題なのは 中央薬事審議会の委員でもある大学教授(医師)が
製薬メーカーの依頼で、新薬の臨床試験を担当しているということ。(※1)
つまり、データを取る人間と審査する人間が同じということになる。
言うなれば、
犯罪者が自ら自分の罪を審判するような、
取締役会で取締の報酬を決めるような。
適正な手続きなんて形式だけの「お手盛り」になってしまう。

審議会に影響力のある大学教授のことを
仮に「審議会医師」と呼ぶことにする。
製薬メーカーは、自社に有利な取り計らいを画策するため、
審議会医師を抱きこむことが常套手段。

薬害エイズに関しては、ミドリ十字という製薬メーカーが、
あの有名な帝京大学副学長「安部英」氏に多額の献金をしていた。
記者会見で「80にもなる年寄りをよってたかって皆でいじめて」と
発言したあの老人。
ミドリ十字からの献金額は、安部氏が設立した財団に4300万円、
国際会議への参加費用に1200万円、会合諸経費に350万円、
国際シンポジウム運営資金2550万円、その他1488万円。
にものぼる。(※2)

当時「安部英」氏は、
83年6月に厚生省が設置した「エイズ研究班」の班長で、
非加熱製剤を継続するか加熱製剤を緊急輸入するかという判断をするにあたり、
多大なる影響力をもっていた。この点は東京地裁によって認定されている。
(東京地判平成13年3月28日判例タイムズ1076号96頁)
当初、厚生省はエイズ班の長に元日本輸血学界会長の村上肖三氏を
任命するつもりでだったのだが、安部氏の強い要望に折れる形となり、
彼に決まったという経緯もある。
彼は権力を私的にふるい、加熱製剤輸入で傾きかけた議事を自分の
一存で強引にストップさせ無理やり非加熱製剤継続の圧力をかけた。(※3)
結果、以降2年もの間、エイズ入りの非加熱製剤が出回ることになる。

安部氏が、このような強引な手法をとったのには訳がある。
実は非加熱製剤使用禁止はミドリ十字にとって死活問題だったのである。
当時ミドリ十字は、非加熱製剤市場の約50%のシェアを有していた上に、
加熱製剤開発にかなりの遅れをとっていた。(※4)
またそれに加えて、非加熱製剤の利潤性も彼を突き動かす原動力となった。
代替製剤(クリオ製剤など)の薬価単価が約7000円なのに対し、
非加熱製剤の薬価単価は約45000円という高額であり、
値引き益を考慮すると、非加熱製剤ならば1本投与する毎に、
病院側には22500〜27000円の薬価差が利益となって入ってくることになる。
患者一人の非加熱製剤投与による一ヶ月分の薬価は56〜70万円にのぼり、
病院が得る薬価だけで年間800万円というとてつもない金額となる。
ちなみにこれはアメリカの三倍近い値段である。
一方、代替製剤には病院側にとっての経済的メリットはほとんどなかった。(※5)

もし非加熱製剤が使用禁止になってしまったら
ミドリ十字に大きな損失が発生してしまうし、
業界の収益にもダメージを与えてしまう。

だからミドリ十字は、
安倍氏や議員などに加熱製剤輸入ストップを働きかける一方で、
非加熱製剤の在庫を売りさばいた。
その際、非加熱製剤は安全な国内血を原料にしているとの
嘘の宣伝までしているから性質が悪い。(※6)

ちなみに議員への働きかけに関しては、
ミドリ十字は82年から94年までの13年間、
自民党に1億円を超す政治献金もしていた。
表に出ていない厚生族への政治献金などを含める
と更に大きなお金が裏工作のために働いていると思われる。(※7)

このように、製薬メーカーと審議会医師は
もちつもたれつの関係だった。


●二つ目のキーワード「天下り」。
「官僚(旧厚生省)」⇔「製薬メーカー」

企業は利権維持のために官僚の天下り先を用意し、
官僚は天下り先確保のため企業に有利な取り計らいをする
というのが天下り構造だが、
薬事でもまったく同じ構造がある。

天下りが最大にやっかいな点は二点。
まず、公務員は定年で退官すれば完全に民間人になってしまう点。
このおかけで天下り時点で民間人となってしまった元官僚が
どこに就職しようが自由という形式論が発生してしまう。
もう一つが、企業側の採用の自由という問題点。
天下りとはお金を産む優秀な社員を採用したいという企業側の利益にも繋がる。
つまり、天下りは一部の民間側の希望でもあり、
役人の一方的な押し付けではないということ。
天下りの問題点はいつも官僚視点ばかりでこの点が非常に曖昧になっている。


厚生官僚の製薬メーカーへの天下りに関しては、
当該レポートのネタ元になったニュース記事を見ればいいことだが、
実は96年時点にすでに100人の天下りが存在していることが
ジャーナリストの調査により判明している。(※8)

とは言え、官僚の取り計らいと天下りに関しては、
ほとんどが密室で行われているため、なかなか証拠が挙がらない。
だが、薬害エイズに関してはいくつか有名なエピソードがある。

(1)エピソード1
1985年8月、血友病患者ら三人が、
非加熱製剤の早期回収を製薬会社に行政指導するよう
陳述するために旧厚生省を訪れた。
対応した厚生省薬務局生物製剤課の松村明仁課長(後に有罪)は、
横を向いたまま「それはできない」と突っぱね、
更に、
「非加熱製剤がすべて汚染されているとは限らない。
厚生省が指導すれば製薬会社は従わざるを得ず、
企業に損害を与えてしまう」とのたまった。
これはエイズ患者がどんどん発生しており社会問題になる直前の話である。
この際に血友病患者の一人が、
以前厚生省が市場に出回ったワインの回収に行政指導を行ったこと
を例にとり、なぜワインは回収できて血液製剤では回収ができないのか
と嘆願したところ、
松村課長は「ワインは一般市民が飲むものだが、
血液製剤の使用者は限られている」と返答した。(※9)

(2)エピソード2
天下りに関しては、より酷い実態もある。
薬害エイズ発生より以前、
300人以上の子供たちが生まれたときから腕がないなどの
重度の先天性障害を負わされた薬害サリドマイド禍があった。
当時責任者であった厚生省薬務局長の松下廉蔵が
何度も何度も頭を下げ、
「薬害は二度と繰り返さない」と誓って和解がなされた。
しかし、薬害エイズ発生当時のミドリ十字の社長として、
被害者らから殺人容疑で告訴され、業務上過失致死容疑で逮捕、
実刑の有罪を受けた人物こそは当の本人、
旧厚生省からミドリ十字に天下った松下廉蔵だったのだ。
これは酷い話である。

(3)エピソード3
更にもうひとつ例を挙げると、
これも薬害エイズ発生より以前に、
キノホルムを服用した1万人以上の人が失明するなどの
全身の神経障害を被った公害が発生した。
俗にいう「薬害スモン禍」。
当時、スモン病患者の星三枝子さんの病床を見舞うふりして、
謝罪するどころか「あなたたちが(裁判を)頑張るのなら、
国はどこまでもやりますよ。ここで和解すれば看護料を出しましょう」
と裁判をやめるように恫喝をかけた当時の厚生大臣小沢辰男は、
厚生省の官僚から衆議院議員となった厚生族のひとりで、
後に元帝京大学副学長の安部氏が例のミドリ十字からの寄付金で
創設した財団法人の理事として名を連ねていた。(※10)

(4)エピソード4
もうひとつ。これは後日談。
1996年5月31日、
菅直人厚生大臣が一連の薬害エイズ禍の責任を問うために、
“厚生官僚の製薬メーカーへの天下りを一切禁止する”という
内容の記者会見を開いた。
大臣の手元にある資料にはその通り「厚生官僚の関連企業への
天下りは自粛する」と記載されていたのだが、
なんと記者団に配布された資料には「厚生官僚の関連企業への
天下りは『当面』自粛する」と書き換えられていた。
しかもこの内容改ざん資料を作成したのは、
薬害エイズ禍を教訓として薬害再発防止のために組まれた
厚生省プロジェクトチームだったのだ。
組織全体が完全に汚染されていた。(※11)

以上のエピソードから、
官僚(旧厚生省)と製薬メーカーも、
もちつもたれつの関係だったということが読み取れる。


●まとめると、
「審議会医師」⇔「製薬メーカー」⇔「官僚(旧厚生省)」
という利権構造。

核となっているのは、民間企業である「製薬メーカー」
医師はメーカーのために働き、メーカーは医師に献金をする。
官僚もメーカーのために働き、メーカーは天下り先を用意する。

お互いが持ちつ持たれつ、皆で一緒に赤信号を渡っている。

裁判で刑事責任を問われた三利権主体の代表者の法廷発言を見れば
この問題の根の深さを垣間見ることができる。
厚生省の松村元課長は
 「なぜ私一人だけが責任を問われるのか、
  厚生大臣、薬事局長を含め全員の責任だ」
と主張した。
一方、安部氏は
「自分は一介の医師(にすぎないの)であり、
 他の国のどの医師も同時に非加熱製剤を使い続けた」
と主張。
そして、ミドリ十字は
「危険な製剤だということを厚生省が教えてくれなかった」
と主張しました。
お互いがお互いに責任をなすりつけ合い。
しかもやっかいなことに各自の責任分散発言には説得力がそれなりにある。
これが薬害利権構造。

官・業・医それぞれの利権の思惑がうまく絡み合って、
腐敗が連鎖しているので、
どこか一箇所だけが巨悪の根源という訳ではない。
構造全体としてひとつの利権構造となっている。

とは言え、国策に利権構造は必然である。
利権構造自体が悪なのではなく、
問題はその利権構造が当事者間に著しい癒着を生み、
その結果、腐敗し権力の病巣と化してしまい、
国益公益よりも私益を優先する構造になってしまっているということである。
特に医療系の利権構造の腐敗は、直接に人命に関わる問題となってしまう。
いみじくも医療が聖職のひとつであるのは、
そのような重大な責任を負っているからである。
したがって、薬害エイズ拡大をとりまく利権構造は徹底的に解明し、
問題の原因となっている社会害の病巣を衆目に晒すことにより
体質改善をしなくてはならない。
今のシステムのままでは薬害の撲滅は永遠に不可能である。



<脚注:引用参照文献>
※1 櫻井よしこ『薬害エイズ 終わらない悲劇』101頁 (ダイヤモンド社 1999)
※2 前掲 ※1 124頁
※3 松下一成『ミドリ十字と731部隊』89頁 (三一書房 1996)
※4 櫻井よしこ「判決はどう受け止められたのか」
   櫻井よしこ他『薬害エイズ無罪判決、どうしてですか?』45頁 (中央公論新社 2001年)
※5 前掲 ※4 45頁
   浜六郎『薬害はなぜなくならないか 薬の安全のために』129頁参照 (日本評論社 1996)
※6 前掲 ※1 125頁
※7 前掲 ※1 80頁
※8 前掲 ※1 81頁
※9 山科武司「薬害エイズ事件と二つの判決」
   櫻井よしこ他『薬害エイズ無罪判決、どうしてですか?』14頁 (中央公論新社 2001年)
※10 広瀬隆『腐敗の連鎖 薬害と原発にひそむ人脈』29〜38頁(集英社 1996年)
    毎日新聞社社会部薬害エイズ取材班『厚生省の[犯罪]薬害』130頁〜
     (日本評論社 1997)
※11 前掲 ※1 103頁

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エイズを知ろう
2006/11/17 19:49

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内 容 ニックネーム/日時
すげー勉強になりました。
ありがとうございます。
JACK
2007/08/12 08:39

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